「勝てない現場には、行かない」。成功を収めた島田紳助が備えていた、天性のマーケット感覚。

今日は休みだったので、いつもお世話になっている「灯台もと暮らし」編集部のくいしんさんから借りた『紳竜の研究』というDVDを観ました。くいしんさんが観たきっかけは、おそらくこのツイート。

特に第二章を重点的に観たのですが、まさに田端さんがおっしゃっているようにすごいです。

第二章は、島田紳助さんがまだ芸能界にいた2007年、NSCで行われた芸人を目指す若手のための講義をまとめたものです。2時間に渡って行われたという講義が、ほぼノンストップで全編収められています。

その内容は、「どうしたら芸人は売れるのか」「売れるための漫才の作り方」「運と夢の考え方」など基本的には夢を追う芸人に向けて語られています。けれど、そのすべてが芸人でない一般人にとっても貴重でかつタメになる内容で、膝を打つ話ばかりでした。実際に観ながらノートをとっていたのですが、メモを書く手が止まらなかったですね。

いろんな話が出てくるので人によって感銘を受けるポイントはさまざまあるかと思うのですが、いまの僕がいちばん感銘を受けたのは「どんな舞台でも、勝てない現場には行かない」という島田紳助さんのエピソードです。

紳助さんが紳助竜介を組んでいた当時、さまざまな舞台の出番があったそうなのですが、そのなかで、たびたび舞台に出なかったことがあったといいます。

当時は髪型をリーゼントにし、ちょっと「ヒール」っぽい立ち回りをしていたこともあり、他の芸人仲間や吉本興業のマネージャーは「また、あいつサボりやがって…」と、単に漫才の出番が面倒でサボっていたのだと思い込んでいたのだそう。

けれど、真意は別のところにありました。その同じ出番に、自分たちより面白い漫才師がいたとき、「負ける」とわかっていたから出なかった、と。同じ舞台の上で比べられてしまうと、他のコンビに「敗れた」という印象がついてしまうため、なんとしてもそれを避けたかった。そのため、紳助さんは劇場の支配人にめちゃくちゃ怒られたとしても、頑として出なかったそうなのです。

「本当はアカンことやで」と前置きをしていましたが、わかっててこの戦略をとるあたりの紳助竜介の強かさはさすがだな…と、改めて感じました。

VTRではB&Bの島田洋七さんや、オール阪神・巨人のオール巨人さんなど多くの芸人がコメントを寄せているのですが、全員が紳助さんのことを「天才だ」といいます。それに加えて、他の芸人の漫才のネタをテープに録音して文字起こししてネタを分析するといった勉強熱心でもあり、天才×努力家というまさに「鬼に金棒」だったんですね。

ぼくはそれに付け加えるなら、さらに天性のマーケット感覚も備わっている人なんだと思います。

「運」についての話になったときに、紳助さんは「芸人の同期だけは、自分じゃどうしようもない外的要因なので、それは『運』だ」とおっしゃっていました。特にその当時の身近な人でいうと、緻密で正統派な漫才を得意とするオール阪神・巨人、それから根っからの明るさを武器に人気を手にしていた明石家さんま、この2組がいたんですね。

そのとき、紳助さんは「正統派な漫才師がいて、とにかく明るくて天才的にトークがおもしろいヤツがいる。じゃあ、おれはどうしたらええんや」と悩み、最終的に「ヒール」という役回りを選ぶこととなります。

それぞれ得意な分野を持っている芸人がいて、その芸人と同じ領域で、能力もすこし劣っている自分が勝てるわけない。だから、そうじゃないところで評価されよう、という発想ですよね。

これもまさに「勝てない土俵で戦わない」という考えからきています。ビジネスの世界では定石ともいえる「ブルーオーシャン戦略」です。さきほどの、「勝てない現場には行かない」という戦略もまさにこれ。一貫していることがわかります。

全く本も読まない、決して勉強をたくさんしてきたわけではなく(本人がそうおっしゃっています)、それを感覚でわかって実践する、この紳助さんの天性のマーケット感覚。これが紳助竜介の成功の要因なのではないか、と。

ちょっと書きすぎてしまいましたが、これら以外にもタメになる話が山のように出てきます。少しでも興味のある方はぜひ観てみてください! きっとなにか参考になるはずです。

 

 

 

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