「仕事で人間の価値が決まるのではない」:『「やりがいのある仕事」という幻想』はとにかく仕事がつらい人に読んで欲しい1冊

ここ数日、激務により過労死してしまった女性の痛ましいニュースの話題をよく見ます。個別のケースについてこれ以上言及することはしませんが、今回の問題はこれから就職しようとしている大学生や転職を考えている方の職業観に少なからず影響してくることと思います。

特に日本は仕事絡みで悩みを抱えている人が多く、それ自体が日本の特徴にもなろうかとしているような状況です。「仕事に関する悩みがゼロだ! 毎日最高だ!」という人は、一部の起業家やワーカホリックの方を除くと、ほとんどいないんじゃないでしょうか。

僕もいまではなんとか無事に、毎日働けているのですが、ちょっと前会社員(新卒)だった頃は結構しんどいときもありました。

朝、布団から起き上がれないんですね。特に痛い箇所があるわけでもないのに、どよーんとなにか重たいものがのしかかっているような感じで、朝の支度に一苦労していました。

で、そんなときに読んだ本がありまして、これにものすごく救われたんですね。それが、作家の森博嗣さんの『「やりがいのある仕事」という幻想』という本。

森博嗣さんは映画化もされた『スカイ・クロラ』や『すべてがFになる』等の作品を書いたミステリー作家です。実はそうしたミステリー作品以外にも、エッセイ集や新書も数多く出していて、それがことごとく面白いんです。

その中で僕がいちばん好きで、かつバイブルにもなっているのがこの『「やりがいのある仕事」という幻想』です。ちょっと引用してみます。

僕の仕事に対する第一原理というのは、これまでに幾度も書いているが、つまり、「人は働くために生きているのではない」ということだ。

さて話を戻そう。つまり、王族や貴族から一般階級の人たちが「のし上がった」時代に、「金を稼ぐ者が偉い」あるいは「強い」という観念が社会に広まったのである。こういった経済的な成功者は、今でもほとんど健在で、事実上社会を支配しているといえる。だから、「人間は仕事で価値が決まる」という現実ができた。大昔からあったというよりも、むしろ最近できた考え方だといえる。

当たり前の話だが、仕事の目的は金を稼ぐことである。義務とか権利とかそういう難しい話をしているのではなく、ただ、この社会で生きていくためには、呼吸をするように、トイレにいくように、ものを食べるように、やはり「働くしかない」ということ。もう少し別の表現で言うと、生きていくには、「働くことが一番簡単な道」なのである。

では、仕事でなかったら、何で人間の価値が決まるのだろう? それは、人それぞれである。仕事以外にも、人はいろいろな行動をする。沢山のことを考える。そういったものすべてで、それぞれに、いろいろな方法で、社会に貢献できる。また、たとえ社会に大きな貢献をしなくても、幸せに生きている人だっているわけで、それも自由だと思う。つまりは、自分がどれだけ納得できるか、自分で自分をどこまで幸せにできるか、ということが、その人の価値だ。その価値というのは、自分で評価すれば良い。

もし、個々の仕事に差があるとすれば、それは賃金の高低くらいだろう。賃金の高い仕事は、能力が要求されたり、大きな責任を問われるものだ。高ければ高いなりにリスクがある。だから、それだけ神経を使う必要があって、体力的にも精神的にも消耗するだろう。だから賃金が高い。逆に、誰にでもできるものは、賃金が安くなる。このあたりは、商品と同じだ。

そもそも、就職しなければならない、というのも幻想だ。人は働くために生まれてきたのではない。どちらかというと、働かない方が良い状態だ。働かない方が楽しいし、疲れないし、健康的だ。あらゆる面において、働かない方が人間的だといえる。ただ、一点だけ、お金が稼げないという問題があるだけである。

まず、本書のスタートが「仕事」の定義から入っています。それくらい、一貫してロジカルで、フラットな目線で「仕事」を捉える森さんの言葉だからこそ、ひとつひとつスーッと染み込むように頭に入ってきます。

なにかに対して悩んでいるときってその対象についてばかり考えたりしてしまいがちなんですが、この本を読むと「あぁ、たしかに。そんなもんだよな」と少し気が軽くなるんですね。ほんと、こういう本の存在って大きいんです。

個人的に、決してネガティブじゃないのも本書のいいところだと思います。つらいときにネガティブな本を読むとそのトーンに引っ張られそうになりますが、この本は極めて淡々と森さんの考えを述べているだけなので、そうはならないんですね。

この本で繰り返し主張される「仕事で人間の価値が決まるのではない」という意見は、常に頭の片隅に入れるようにしています。

いま仕事が楽しくて仕方がないひとも、ちょっとしんどいなと感じている人も、全ての働く人にオススメしたい本です。

text by shimotsu_

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