昨年の今頃、私はとある大きなプロジェクトのリリースを終えたところでした。デザイン専門学校である「桑沢デザイン研究所」様の卒業制作の作品をアーカイブするためのサイト、題して「桑沢卒展アーカイブ」というWebサイトの制作プロジェクトです。
桑沢卒展アーカイブ ▶︎ https://www.sotsuten-archive.kds.ac.jp/
昨年の公開時にはリリースと同時に当時(2021年度)の卒業生の作品が公開され、それからちょうど1年がたった先月末には2022年度の卒業生の作品が公開されました。このサイトではこうして、毎年の卒業生の作品を蓄積していくように内容が更新されていきます。サイトの設計としては最低10年は運用できることを前提に製作を行いました。
今年2022年度の学生の作品の公開作業は完全に開発者である私の手を離れ、学内の方々のみで行われました。つまり、私は一人の閲覧者として今年の作品の公開を楽しみにしてきました。そして、いざずらりと並んだ新しい作品たちを見た時は、なんとも感慨深い気持ちになりました。
そのとき私はふと、「このように長く運用されるWebって良いな」と思いました。というのも今回のように、10年以上のスパンで運用することを前提にしたWebの製作って実は少ないのです。広告的に活用されるWebサイトは自ずとその償却期間は短くなりますし、コーポレートサイトやメディアサイトにおいても、長く使われることを願ってプロジェクトの製作は進められますが、実際には10年以上もリニューアルやクローズが行われることなく運用されるサイトは稀だと思います。
その大きな理由としては、Webサイトというのは常にデザインと技術のトレンドの波にさらされているためです。製作した当時は満足のいく仕上がりであったとしても、数年単位で大きく変わるWebのトレンドによってあっという間に古く感じられるようになってしまう。本プロジェクトにおいてもその可能性を完全に排除することは難しかったのですが、なるべく流行り廃りに影響されないような技術選定、デザイン選定を1つ1つ丁寧に行ってきたつもりです。(余談ですが、職員の方が更新を行うためのマニュアルもデザイナーの方がとても丁寧に作ってくれていました。マニュアルを見て惚れ惚れとしたのは初めてでした。)また、Webサイトが長く続きにくいもう1つの理由としては、企業サイトの場合であればその企業自体のフェーズの変化に伴うリニューアルの必要性が生じたり、ビジネスとして運用されるサイトであればなおさらそのビジネスの拡大縮小の変化によるアップデートの必要性は高くなるでしょう。その点においては、本プロジェクトは卒制アーカイブという性質上、そうした外部要因から受ける変動確率は低いという点と、何より責任者である学内の方々が10年以上運用するんだと覚悟を決めてくださったことによって成立しています。
このように様々な運の良い条件が重なった上での「10年以上運用することを前提としたWebサイト」。1年越しでそのありがたみにしみじみと感傷してしまいました。ひいては、今後もこういう仕事の割合をより増やしていきたいなとも思いました。