タチの悪いクライアントなんて本当はほとんどいないんじゃないかという話。

クライアント(=お客さん)から依頼を受けて納品物を制作する受託制作会社の世界では、クライアントに対する一定の不平不満のようなものが共通言語として蔓延しているように思います。

・要件定義したはずの仕様を、製作途中の段階でひっくり返してくる
・技術的にできるはずのない要求をしてくる
・費用対効果の低い細かな拘りを執拗に要求してくる

…などなど。いずれも決して、僕自身の経験としてピンと来ないわけではありません。むしろ、これらの要求は当たり前のように発生するものだと思っています。けれど、こうした要求をしてくるクライアントに対して腹が立ったりといった経験はあまりないのです。

何故なら、クライアントに対して「あなたの仰っている要望は、こういう理由でのメリットとデメリットがあり、現状デメリットの方が大きいので避けたほうが良いと思います」という具合に、丁寧で建設的な議論を持ちかければ、納得してくれるケースの方が多いからです。100%納得してくれるわけではなくとも、お互いの納得のいくところまで譲歩してもらえるケースがほとんどです。

当たり前ですが、クライアントは制作会社に対して嫌がらせの目的で過剰な制作を要求しているわけではなく、ただただ心から「こうした方が良くなるはず」という意見を投げてきてくれているだけなのだと思います。

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それではなぜ、こんなにも「たちの悪いクライアント像」が制作会社の中で蔓延しているのか。僕なりに考えてみました。
僕らが今まで出会ってきたお客さんが、運良く良い人ばかりだった、という可能性ももちろんあるのですが…。

大きな可能性として考えられるのは、チームメンバーの構成人数の問題です。僕らは基本的に、弊社のフロントマン2名(+ ときどきパートナーメンバー)で動いています。つまり、プロジェクトメンバーがほぼ全員、クリエイター 兼 窓口 という状況。
この構図だと、クライアントと交渉をする立場とその制作作業を負う立場が同じなので、精神衛生上健全であると言えます。

一方で、大きな制作会社や広告代理店だとそうはいかないでしょう。プロデューサーやディレクターと呼ばれるフロントマンが、クライアントとコミュニケーションをとる立場として一任され、残りのクリエイターに制作業務をお願いするという形態がほとんどだと思います。
すなわち、お客さんとコミュニケーションをとる仕事と、制作を行う仕事がきっぱりと切り離されていて、クリエイターはお客さんとほとんど顔を合わせることなくプロジェクトを遂行するという形態です。

職能の細分化がされていて、ワークフローとしては効率的なのだと思いますが、起こりうる懸念がひとつ。それが、今回の本題である「クライアントから無茶振りを受けたとき」の対応です。

例えばディレクターが打ち合わせに行き、クライアントから大きなどんでん返しを受けたとします。会社に戻って、制作チームにそのことを伝えなければならない。心が重い…。
そんなとき、どう伝えるか。「みんな、申し訳ない。自分の力不足で、制作の方向性が大きく変わってしまいそうだ」と伝えるのは非常にハードルの高いことなんだと思います。僕もそんな出来の良い言葉をツラツラと述べられる自信はありません。
じゃあどう言うか。「クライアントが本当に物分りの悪い人でさ…。このタイミングでこんなフィードバックもらっちゃった。呆れちゃうけど、やるしかないね…」という具合に、クライアントを仮想敵と見立て、自らのチームに一体感を生むことで自分を守ろうとするのだと思います(本能的に)。

制作陣はクライアントとのやりとりの様子を想像するしかないので、きっと悲惨なクライアントだったんだろうなぁと思い込み、実際にチームメンバー全員の中で「たちの悪いクライアント像」が形成されていきます。そしてその仮想敵を倒すために、ネガティブなモチベーションをトリガーにして開発は進む…なんてことが現場でのあるあるなんじゃないかなぁと思ったのです。

続く。

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