僕は作家の森博嗣さんが好きで、よくエッセイを読んでいます。今日は、そんな森さんのとある本について紹介してみようかなと。
その本は『臨機応答・変問自在―森助教授VS理系大学生』という本。森さんは、以前とある国立大学工学部の助教授で、その授業の際に学生に対しておこなっていた試験の内容をまとめて本にしたものです。
その試験の内容というのが、「授業の内容について学生に質問をさせる」というもの。森さんはその質問すべてに回答し、毎回授業で1枚の紙に刷りだして配布していたのだそうです。また、その回答の内容は毎回点数がつけられ、文字とおり試験として扱われていたそうです。
本はその質問と回答がセットになった「問答」が、ある程度ジャンルごとにずらーっと列記されている形式になっています。
僕も工学部出身なので、質問のなかにあったヤング率の話や物理学の話はある程度わかっておもしろかったのですが、そうでない人が読んでもとても楽しめる内容だと思います。森さんの所属は建築学科なので、質問の内容もその専門領域に関するもの多く、それはそれで新しい学びがあっておもしろいです。
ぼくがこの本でいちばんおもしろいなと感じるのは、森さんが、そもそも「学生に質問をさせる」という試験をおこなっていた理由について。
森さんいわく、「質問の質にこそ、その人の真の実力があらわれる」とのことで、ペーパーテスト以上に有意な試験が行えるのだそうです。
たしかに、「こんな質問、誰でもできるな」と思うような質問から「そんなこと考えたこともなかった!」「その視点はするどい!」と思わせられるような質問まで、その質のレベルはさまざま。
読みながら「質問のレベルで実力がわかる、とはこういうことか」とひとりで膝を打っていました。
質の高い質問をするということは、その事象についてはある程度理解したうえで、その先にありそうな問題や可能性について検討するということだといえます。つまり、ちゃんと論理を展開して、その先のステップで、躓くべきところで躓いている、とでもいいましょうか。
普段何気なくやっている「質問」ですが、突き詰めると奥が深いよな…、ということを再認識させられる本でした。