発明をしよう。

最近では、自社事業をやるときも受託事業をやるときも、「発明」というキーワードを意識して考えるようにしています。ここでいう発明というのは、何も特許をとるほどの大げさなものではなく、もっと小さいレベルでの発明のことを指しています。

まず、「発明」の定義を明らかにしておくと、

・今までに生み出されていない、独創性のある表現
・再利用性の高いもの

という2つの条件を満たすものが発明と呼べるものだと考えています。特に2つ目の定義としている「再利用性の高いもの」というのが発明と呼ぶにあたって重要な条件。

具体的な例を見ていきましょう。
例えば、近年で急速に知名度を伸ばし、今ではすっかりおなじみになったレシピ動画サービス。あれも、表現的な発明があったからこそ、これだけの急成長を遂げることができました。
その発明とは、いわゆる「真俯瞰撮影」です。

 

こちらはレシピ動画サービスの1つ「kurashiru」の例。このように、料理の手順を解説するために、作業風景を真俯瞰で撮影するという手法は、ユーザにとってのわかりやすさとオペレーションの容易さの両方を兼ね備えていることから、このコンテンツを制作する企業が一気に増え、爆発的なブームへと繋がりました。機材さえ揃えれば誰でも動画を撮影できるという参入障壁の低さ(再利用性の高さ)から、今回で言う「発明」の事例に相応しいと言えます。ちなみにレシピ動画サービスのパイオニアはBuzzfeedが提供するTastyであると言われているため、この発明の生みの親はBuzzfeed社であると考えられます。

さらに、動画繋がりで行くと、Youtuberが表現手法として多用する「発言と発言の間を細かくカットすることで、適度なテンポ感を生み出す編集技法」も彼らの大発明であると言えるでしょう。この説明で伝わりましたでしょうか…?(笑)
ピンと来なかった方は、改めてヒカキンさんの動画などをご覧頂けるとわかるかと思います。

ちなみにこの編集技法には名前があるらしく、「ジャンプカット」と呼ばれるそう。
昔からカウントダウンTVのインタビューなどで使われてはいたのですが、YouTuber達の登場によって、さらにこの表現が身近なものになったことは間違いありません。

長ったらしい間を排除し、面白い部分だけ抽出して届けられるこの表現手法は、スマホ世代でせっかちな若者のニーズにぴったりと答えていたのでしょう。
余談ですが、先ほどのレシピ動画でもジャンプカットは頻繁に使われており、「余計な間を排除する」というのは近年のコンテンツ制作における共通のルールなのかもしれません。現代人は総じてせっかちになっていっているということでしょうか。

さて、Webの世界に移りますと、例えばいわゆる「シャッフルテキスト」と呼ばれる表現。Flash時代よりあらゆるWebサイト上で見られるこの表現ですが、最初に発明されたのは中村勇吾氏。彼のWebサイトには昔からこのシャッフルテキストの表現が数多く施されており、彼の代名詞とも呼べる表現の1つだと思っています。
その再利用性の高さから、他のクリエイターも同じような表現を実装することもしばしばありますが、それでも本来はやはり、この表現は中村勇吾氏のものというイメージが根強く残っています。(下記は中村勇吾氏(tha社)が制作した佐藤可士和氏のWebサイトより)

 

さらに、Webメディアの世界における発明で考えると、最近ではすっかりよく見る以下のような対話形式のデザインが、発明の例として挙げられます。

 

http://orekabu.jp/shikakabu/

 

顔写真の丸アイコンの下に、アウトラインが描かれた視認性の高い字で配置された名前。そしてその右側に、その人が発言した内容が記述されています。
非常にシンプルでわかりやすいデザインであり、Webの縦読みとの相性も良く、再利用性も高いことから数多くのWebメディアで採用されているこのデザイン。元はバーグハンバーグバーグ社の発明であると言われています。
コミカルな内容のコンテンツとの相性も良く、読み手も非常にテンポよく読み進められるのが特徴です。

 

このように、制作の世界では特許とまではいかないけれど、どこかの誰かが最初に発案し、業界で広く使われるようになった制作手法が数多く存在します。そして、こういった発明を生み出せるクリエイターになりたいと最近はよく考えます。そのためにできることとして、全てのプロジェクトで必ず1つは発明と呼べるものを生み出すことを意識しています。技術的アプローチであったり、コンセプトや表現であったり。決して再利用性が高くて広く使われるような発明にならなかったとしても、そういう意識が新しい表現を生み、見る人の心に引っかかりを与えることは間違いないと考えています。

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