この1年間でありがたいことにインタビューされることとインタビューすることの両方の機会を得ることができました。される側/する側の違いについて、気づいたことがあったので書き記しておきます。
インタビューする側の立場になったことがある方は分かると思いますが、インタビューをするときに考えるのは、その引き出した話をどう扱って、オーディエンスに届けるのか(または届けないのか)ということ。例えば、テキストを主体としたメディアであれば、「このトピックは使おう」だとか、「ここは素人にはわかりにくいエピソードなので、解説のイラストを交えよう」とか、向いている方向は常にオーディエンス(=読者)だと思います。
一方インタビューされる側はどうでしょうか。僕らも何回かブログやウェブメディアの取材を受けたことがあるのですが、いただいた初稿の細かなところがすごく気になるんです。特に、「」内の発言や、他者に対するメッセージを発している部分については、くまなくチェックすることになります。つまり、インタビューされる側は、そのアウトプットを目にする競合他社やその他ステークホルダーの受け取り方とそれに対する反応がとても気になる、ということ。
実際、一度受けた取材の原稿を確認させてもらったときは、「この表現は◯◯さんに失礼いあたるな…」とか「この表現はちょっとトゲが立ちすぎている」とか、そういう具合にいろんな表現の角を削るようなチェックをしました。もちろん、書き手のことは信頼しているし、そのまま発信してもらいたい気持ちは山々だったのですが、どうしてもいろんな人の顔が浮かんで、メッセージを丸くせざるを得ない、そういうことがありました。
ライターの方にしてみれば、ちょっと残念です。「ここはめっちゃおもしろい! 絶対拡散させたい!」と思うようなトピックが、ならかの制限を受けて公開NGになった、みたいな経験をしたことがある人も多いでしょう。その気持はめちゃくちゃ分かるんです。これは、どちらの立場も経験したからこそ分かる。
例えば、歴戦の編集者やライターであれば、ちょっと危険な香りのする表現や、その業界特有の事情などを加味して構成を練り上げていくのだと思いますが、それができるようになるには相当の経験が必要なはず。それに、一方のオーディエンス側はエッジが立ったメッセージを好むことが多いので、その板ばさみもあるでしょう。
僕は前職でウェブメディアの編集ディレクター的なことをやっていたのですが、この視点がまるっと抜けてしまっていました。当時は本当にオーディエンスしか見ていなくて、「そのコンテンツがどう役に立つか」しか考えていませんでした。今思うと、本当に危ない橋の渡り方をしていたというか、いつか事故っていただろうな、と…。(ちなみにオウンドメディアの運用支援をする立場の場合、オーディエンスとインタビュイーとクライアントという3方を意識しないといけないのですごく大変でした。)
とにかくここ1年で学んだのは、インタビューする側(代弁して発信する側)は、インタビューされる側の背後と視線の先、そしてその横に立っている人(競合、協力者)に対する影響を最大限に考慮しましょう、ということです。インタビュー中や事前にそのあたりの合意が取れていたりするとラクなのですが、必ずしもそうはいかないと思うので、そこはめいいっぱい想像力を働かせる場面なのかなと。逆に、それができてくるようになると、インタビュー〜記事公開・拡散までの流れもとてもスムーズに、かつ上手にできるようになるんじゃないかと思います。いやはや、難しいですね、インタビューって。
この話がなにかの参考になれば幸いです。