僕は2年ほど前にBaPAというクリエイティブスクールに通っていたことがあります。当時のBaPAでは、集まった生徒同士で5名程度のチームを作り、約3ヶ月間かけてアイドルのライブ演出を手がけることがゴールとされていました。
まずは通常のプロジェクト制作と同様、作るものの方向性を企画するところから入るのですが、参加している方々はこのBaPAにかける意気込みが強い余りに、時間をかけどもかけども中々どのチームも企画が決まらない状態が続いていました。確か、4ヶ月間あるうちの2ヶ月が過ぎたところでも、9割以上のチームが企画が決まっていないという、結構黄色信号な雰囲気が漂っていたことを覚えています。
すると、講師の1人である中村洋基さんがこんなことを伝えてくれました。
「君たち、最初からBest of Bestを目指そうとしすぎだよ。最初はちょっと微妙だなと思うようなアイデアでもいいから、とりあえず走り出してみることの方が大事だから。そこから、『もっとこうしたら良くなるんじゃない?』というようなアイデアが膨らんできて、微妙だと思っていたアイデアが次第に良くなっていく可能性の方が大きいから。」
BaPAでは中村勇吾さんや辻川幸一郎さん、石橋素さんなど名だたるクリエイター講師の方々による素晴らしい講義があったのですが、僕の中ではこの中村洋基さんが伝えてくれたメッセージが一番印象に残っていて、今でも時折思い出します。
最近ではやっぱり自社事業の話になるのですが、こういう「絶対成功するぞ!」と意気込むプロジェクトほど、力む余りに最初からBest of Bestを目指そうとしがちです。でもそれはビジネス用語的に言うならば、PDCAのPのところでずっと足踏みしてしまっている状態。スッと肩の力を一度抜いてみて、とりあえずちょっと微妙なPでもいいからDに進んで見る。すると、思いの外良い感触が得られることもあって、それを振り返ってみてさらに改善し、また次のPDCAに移っていく。
プロジェクトがどんなに大きくなろうとも、この基本は変わらず、むしろそういうときこそ意識的に「微妙でもいいからひとまず実験的にやってみる」を小さく積み重ねていくことでスムーズに前に進んでいけるのだと思います。