unlearning (学習消去)

 

Fender Music Japanが提供している、以下のYouTubeチャンネルを見つけた。Fenderのギターを使用しているギタリストにフォーカスを当て、それぞれ試奏してみたり、インタビューしている様子を収めた2分間くらいの緩い動画だ。

[blogcard url=”https://www.youtube.com/channel/UCEqA90R-Uun-5uAIA7LWaYw/videos”]

僕は音楽に特別詳しいわけではないが、こうしてギタリストが一人でエレキギターを弾いている様子を見るのは好きだ。各プレイヤーの、いわゆる手癖と呼ばれるものを観察するのが好きだ。もちろんプロのミュージシャンだからみんな上手いことには変わりないのだが、各人が持つ手癖には驚くほどバリエーションがある。運指の綺麗な弾き方をしているプレイヤーを見ると、本当に惚れ惚れする。

 

 

そこからふと、手癖について考えてみた。僕がこれまでに3年間以上続けたことのある技能といえば、小学校のときのピアノ、中学校のときの野球、高校のときのギターがある。それぞれ振り返ってみると、おおよそ3年くらい続けたあたりから、自分にとっての手癖が固まってくる(スポーツなら手癖ではなく、フォームという言葉が相応しいが。)。そしてその手癖を磨いていくことで、プレイヤーとしての個性が出てくる。
現在、社会人になってから3年ちょっとが経ったところだが、仕事の進め方においても手癖がついてきちゃってるな、と感じる場面がある。「ついてきちゃってるな」と表現したのは、それが現在やりたいことに対して不利なベクトルで作用する場面が出てきているからだ。

僕は社会人としての3年間のほとんどを、プロジェクトベースで仕事を進める場に身を置いていた。プロジェクトベースというのはつまり、約1〜3ヶ月の納期が与えられて、その期間内で一定水準以上のクオリティを持ったプロダクトを完成させる仕事のことだ。アイデアを考え、手を動かし、世の中に届けるというサイクルをとにかく早く回すことで、圧倒的な早さでスキルを伸ばすことができるマッチョな仕事だ。一方で、どうしても締切までにリリースすることが最優先目標になってしまうため、開発前の仮説検証やリリース後のグロースに割かれる時間は少なくなってしまうという特徴もある。現在、自社事業を1から立ち上げようとしているフェーズにおいては、こうしたデメリット的な特徴が足かせになってしまっていると感じる場面がある。

例えば先日、新しく立ち上げようとしている事業の座組が固まり、いざ動き始めようとしたときのこと。僕は早速、目に見えるものを作ってチーム内でのイメージを共有しようと思った。いわゆるワイヤーフレームを起こそうと思ったのだ。すると、メンバーから「まだ形にするのは早すぎる。本当に今やろうとしていることが正しいか、もっと入念に仮説検証を踏むべきだ。」という指摘があった。すぐにはこの言葉がピンと来なかったが、彼の言うように仮説検証のフェーズを前段に踏むことでやるべきこと / やらなくてもよいこと がかなり明確化されてきた。

このあたりから、僕はプロジェクトベースの手癖を取り払おうと思い始めた。一度習得したやり方を意識的に忘れようとすることを「unlearning (学習消去)」というらしい。DeNAの南場さんは著書の中で、コンサル時代に蓄積された膨大な判断ロジックが、素早い経営判断が求められるスタートアップのフェーズにおいてはむしろ邪魔になることから、必死に学習消去に努めていたことが語られている。

また、機械学習アルゴリズムの世界では過学習という言葉がある。Wikipediaを引用すると、

統計学や機械学習において、訓練データに対して学習されているが、未知データ(テストデータ)に対しては適合できていない、汎化できていない状態を指す。

とある。つまり、特定の条件下(INPUT)においては適切な結果(OUTPUT)を返すことができているが、ちょっと例外的な条件を与えると途端に求められるパフォーマンスが得られなくなる状態のことだ。これは、機械学習に限らず、人間の学習プロセスにおいても同様の事象はよく見受けられるように思う。思うに、3年で出来てくる手癖なんて大体ろくなものじゃないことの方が多い。悪い癖がつき、それに頼って上手くなった気になってしまう、いわば過学習のような状態を招く。本来はもっともっと長い年月をかけながら、自分にとっての正しい癖を習得していくべきなのだと思う。以下に挙げる過去のブログ記事も、同じような考えを基に意識している習慣である。とにかく手に変な癖をつけないように、毎回違うやり方・アプローチでトライするようにしている。

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最近はこうして人の学習プロセスについて深く考える機会が多い。例えば英会話1つとっても、本を買ってきて実直に学ぶ人、いきなり海外に飛んで学ぶ現場思考の人、今っぽくSkype英会話から始める人など、様々だ。そして、大人になってから物事を習得しようとする時に、どの角度から攻めるかというのはその人の人となりを表すように思う。

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