大学時代に読んだ本の中で、とりわけ感動した本があります。
矢沢永吉氏による「成りあがり」です。
30年以上前に出版された古い本ですが、矢沢永吉さんに対して糸井重里さんがインタビューをして書き上げられた、非常に豪華な本です。当時二人共30歳くらい。
僕がこの本を読んだ当時は大学生真っ只中で、将来何をやるかも明確に決まっていなかったときでした。そんなとき、テレビ番組で有吉弘行さんが「自分も実は、成りあがりの影響を受けて芸人なろうと思ったんだよね」と言っていたのを受けて読んでみたのを覚えています。そして、いざ読み終えてみると、当時大きな野望もなかった僕の心にズシンとくるものがありました。 思い返すと、この本をきっかけに僕の心は上へ上へと向かうようになったように思います。
さて、そんな本をなんとなく、5年ぶりくらいに読んでみようと思ったわけです。今読んだら、どんな感想を抱くのか。…すると、思いの外、今の自分の心には当時ほど強烈なインパクトはなかったのです。
これは別に、ツマラナイ大人になってしまったというようなセンチな話ではなく、単純に今の自分がいるフェーズが変わったからだろうと思います。
この本、読まれた方はわかると思うのですが、とにかく感情に対して訴えかけてくる。特にモラトリアム期で志もなく、悶々としている男にはめちゃくちゃ響く内容なのです。
従って現在、やりたいことも野望もはっきりと見えてきて、それに向かってしっかりと歩みを進めている中でこの本を読んでも、正直「うんうん、そうだよね、わかる。でももうその通過点はとっくに過ぎたよ。」といった感想を抱いてしまいました。非常におこがましい話ですが…。
一方で、昔は気づかなかった別の点で感動した部分もありました。「バンドが絶頂期で、他のメンバーはライブ後に夜の街で豪遊するようになったときも、矢沢氏は絶対に自宅にそのまま帰り、家族を大事にしていた話」とか。
つまり、すごくポジティブな意味で、本に対して抱く感想が変わったのです。普段自分の心とはずっと付き合っているので、その長期的な変化には気づきづらいですが、こうして昔感動した本を改めて読んでみると、まるで鏡を見るかのように自分の心の変化に気づけるなぁと思いました。今後もおそらく、感動するポイントや抱く感想は変わっていくと思うので、自分を変えたバイブルのような本は5年おきくらいに読んでみると面白いなと思いました。